オーソモレキュラー栄養療法の視点から探るタンパク質の驚くべき重要性

 

オーソモレキュラー栄養療法は、微量栄養素が細胞や分子レベルでどのように作用するかを探求し、個々の生体機能を最適な状態に保つことを目指した栄養医学です。
その中でも、タンパク質は特に重要視されています。今回のコラムでは、タンパク質の基本知識とその働きや重要性について解説します。

タンパク質の基本のき

まずは基本中の基本、「タンパク質とはいったい何なのか?」をご説明します。

▶︎タンパク質とは

タンパク質は、アミノ酸と呼ばれる小さな分子が結合してできた有機化合物の一種であり、生物の細胞構造や機能の基本的な要素を構築する栄養素です。
タンパク質は英語でproteinと言いますが、語源はギリシャ語からきていることをご存知ですか?proteinはギリシャ語の「最も大切、第一の」という意味のprōteîosという言葉に由来しています。 この語源からも、体にとって最も大切な栄養素だということをお分かりいただけるのではないでしょうか。

▶タンパク質を構成するアミノ酸

アミノ酸は特定の配列で連なり、ペプチド結合を形成することでタンパク質を構成します。
私たちの体は、20種類のアミノ酸で構成されています。アミノ酸は9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分類され、必須アミノ酸は体内で合成できないために食事から摂取する必要があります

オーソモレキュラー栄養療法がタンパク質に重きを置く理由

オーソモレキュラー栄養療法では、なぜタンパク質が重要とされているのでしょうか? その理由を6つに分けてご説明します。

▶①体の構成要素である

タンパク質は体を構成するいわば建築材料としての側面があります。細胞膜や骨格組織にはタンパク質が豊富に含まれ、タンパク質がなければ細胞は正しく機能せず、その形状を保つことが難しくなります。つまり、タンパク質がなければ、基本的な生体機能が成り立ないのです。

▶②酵素としての役割がある

酵素自体がタンパク質の一種で、機能は構造によって異なり、タンパク質の性質が酵素の機能に影響を与えています。また、酵素は「基質特異性」と言って、特定の物質にだけピンポイントで反応するという性質があります。
生体内の数多くの反応を促進する酵素は、食物をエネルギーに変換し、代謝プロセスを円滑に進める鍵となる存在です。

▶③免疫機能のサポートする

抗体やサイトカインなど、免疫機能に関与する多くの分子がタンパク質からつくられています。これらは感染症や異常細胞への対抗に重要な役割を果たし、免疫細胞の働きを支えています。つまり、タンパク質が免疫系の要となり、私たちを病気から守る盾を形成してくれています

▶④ホルモンの合成

成長ホルモンやインスリンなど、体の様々なプロセスを制御するのがタンパク質由来のホルモンです。これらが正常に機能することで、ホメオスタシス(恒常性の維持)が維持されます。ホメオスタシスとは体の外から受ける環境や内部の変化に関わらず、体の状態(体温・血糖・免疫)を一定に保つことを指し、健康維持の上でとても大切です。

⑤筋肉の形成や修復

トレーニング

運動やトレーニングにより筋肉を使用すると、微小な損傷が生じます。これに対して、体内のアミノ酸が合成され新しいタンパク質が形成されます。特に、重要な役割を果たすのは分岐鎖アミノ酸で、新しい筋繊維や既存の筋肉を増やすことに役立ちます
また運動やトレーニングによる筋肉の損傷や炎症が発生すると、修復プロセスが始まります。修復には、特にアミノ酸の供給が不可欠で、損傷した組織を修復する新しいタンパク質が合成されます。このプロセスが適切に行われることで、筋肉が強化され、トレーニングによって得られた成果が現れます

▶⑥エネルギー源として

私たちの体のエネルギーになる栄養素は三大栄養素と呼ばれ、炭水化物、脂質と同様に、タンパク質もエネルギー源として機能します。特にエネルギー不足時には、タンパク質が代謝され必要なエネルギーを供給します。
同時に、オーソモレキュラー栄養療法の視点から見れば、タンパク質はエネルギー源としてではなく、体の構成要素として使われることも重要と言えます。そのため、炭水化物や脂質から必要なエネルギーをしっかりと確保することも大切です。

タンパク質はどれくらい摂ったら良い?

先述したように、タンパク質はエネルギー源としてではなく、体の構成要素として使われることが重要です。その上で、1食あたりどれくらいのタンパク質を摂取する必要があるのでしょうか。

▶︎タンパク質の必要量

オーソモレキュラー栄養療法における、タンパク質の摂取量の目安は「標準体重(㎏)×1.5g~2g」と言われています。ご自身の体重で計算してみましょう。例えば、体重が50㎏の方の場合、75g~100gが1日の摂取量の目安となります。
また、計算で出た数字を3で割ることで1食あたりのタンパク質量を知ることができます。自分にとって必要な量を知っておくと買い物や外食時、メニューを選ぶ時に役立ちます。

タンパク質の1日の摂取目安量については、こちらの記事にも書いてあるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

▶︎主要なタンパク質源

タンパク質には肉や魚、卵といった動物性タンパク質と、豆腐や納豆などの植物性タンパク質があります。タンパク質を選ぶ時は肉+卵、魚+豆腐など2種類以上組み合わせると必要量の摂取がしやすくなります

まとめ

タンパク質はまさに体の「分子の建築材料」であり、体の構築やエネルギー生産において主役の1つとも言えます。オーソモレキュラー栄養療法において、タンパク質の十分な摂取は健康なライフスタイルを築く鍵となります。

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】厚生労働省日本人の食事摂取基準2020年版 たんぱく質
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html 

【2】酵素反応の基礎 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/66/12/66_584/_article/-char/ja/ 

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。