風邪知らず? オーソモレキュラー栄養医学の視点で見るビタミンCの効果

 

オーソモレキュラー栄養医学は、栄養素や栄養療法を活用して疾患を予防・治療し、最適な健康を追求するアプローチです。その中でもビタミンCは特に重要な栄養素の1つです。風邪は一般的な疾患ですが、季節ごとに私たちの健康を脅かすものです。この記事では、オーソモレキュラー栄養医学の視点からビタミンCが風邪に果たす役割について言及します。

ビタミンCの基本知識

ビタミンCは体内で合成できないため、食品から摂取する必要があります。食品から摂取されたビタミンCは、消化管から吸収されて速やかに血中に送られます。食事から摂取したビタミンCと、サプリメントから摂取したビタミンCは、どちらも体内で使われる利用率に差はなく、200 mg/日程度までは 90% と高い率で吸収されます。ただ、1g/日以上になると吸収率は 50% 以下になると言われています。

参考文献:【1】【2】

ビタミンCの抗ウイルス作用

風邪や他のウイルス感染症

ビタミンCは、私たちの体にとって重要な栄養素で、特に風邪や他のウイルス感染症に対抗する際に役立つと言われています。
最新の研究では、ビタミンCが直接ウイルスの侵入を阻止し、感染が広がるのを抑制する働きがある可能性が示唆されています。例えるなら、ビタミンCは体内にて兵士のように働き、風邪や他のウイルスが体に入ろうとするのを防いでいるイメージです。これによって、ウイルスが広がることを抑え、免疫システムがウイルスと戦うのをサポートしていると考えられています。
簡単に言えば、ビタミンCは体を守る盾のような存在で、風邪などのウイルスから身を守る手助けをしてくれる栄養素なのです。ただし、これは予防的な効果であり、具体的な症状が出た場合は医師と相談することが重要です。

免疫システムの強化

1970年代に初めてビタミンCが風邪やがんの予防に効果があるとの報告があり、以降、ビタミンCと免疫に関する研究が行われています。
免疫細胞は、体内で感染や病気に対抗するために働く特別な細胞です。これらの細胞の中には、ビタミンCが豊富に含まれています。感染症やストレスの影響を受けると、免疫細胞内のビタミンC量が急激に減少することがあるため、感染症にかかったときには特に多くのビタミンCが必要になることがあります。

参考文献:【3】

ストレス緩和

ストレス緩和

ビタミンCは抗酸化作用を持ち、ストレスによって引き起こされる酸化ストレスと呼ばれる状態から体を守る役割があります。
ストレスや炎症などが引き起こす酸化ストレスは、体内の細胞や組織に損傷を与えることがあります。ビタミンCは抗酸化物質として知られ、酸化ストレスから体を保護し、細胞のダメージを軽減するのに役立ちます。

またストレス状態では、アドレナリンと呼ばれるストレスホルモンが増加します。ビタミンCはアドレナリンの合成と分解に関与しており、正常な範囲で保たれることが重要です。充分なビタミンCが摂取されない場合、アドレナリンのバランスが崩れ、ストレスへの対応が悪化する可能性があります。したがって、ビタミンCの十分な摂取は、ストレス応答においても重要な要素となります。

栄養素の相互作用

ビタミンCは単体でも効果を発揮しますが、他の栄養素との相互作用により、その効果が強化されることがあります。
これらの相互作用は、単体で摂取するよりも、異なる栄養素を含むバランスの取れた食事が重要であることを示しています。栄養素同士が補完し合い、相乗的な効果を発揮することで、免疫システムや体の健康全体に対するサポートが強化されます。そのため、バラエティ豊かな食材を摂り入れ、栄養バランスを保つことが重要です。

▶ビタミンC×亜鉛/ビタミンD

ビタミンCと亜鉛やビタミンDとの組み合わせは、免疫システムの健全な機能をサポートし、風邪の予防に効果的であるとされています。

▶ビタミンC×ビタミンE

ビタミンCは、ビタミンEと一緒に摂取することで相乗効果が得られます。 ビタミンEは体内の脂の部分を活性酸素から守ってくれていますが、この時にビタミンCが一緒にあると、サビ取りをして疲れてしまったビタミンEをもう一度よみがえらせてくれるのです。

▶︎ビタミンC×鉄

鉄には、「非ヘム鉄(主に植物由来の鉄)」と「ヘム鉄(動物由来の鉄)」があります。食品に含まれる非ヘム鉄には「二価鉄(Fe++)」と「三価鉄(Fe+++)」があり、その多くは「三価鉄」です。二価鉄は可溶性なので、摂取後にそのまま腸で吸収されます。一方で、三価鉄は「ビタミンC」や「消化酵素」によってイオン化され、二価鉄に還元されてから体内へ吸収されます。
そのため、特に植物性由来の食品から鉄を効率よく吸収するためには、「ビタミンCと一緒に摂取すること」が1つのポイントです。

参考文献:【4】

まとめ

オーソモレキュラー栄養医学の視点から見たビタミンCの効果は、抗酸化作用や免疫システムの強化など様々です。特に風邪の初期症状へのアプローチや免疫予防において、ビタミンCが有望な役割を果たすことが期待されます。

また、ビタミンDやビタミンEなどの栄養素と組み合わせることで相互作用も得られるため、風邪や免疫機能のサポートにおいて重要であるとされています。積極的に様々な食材と組み合わせて、風邪知らずの元気な体を目指したいものですよね。

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 ビタミンC
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
【2】厚生労働省 e-ヘルスネット ビタミン
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-027.html
【3】曽根 保子、藤原 葉子(2013)「免疫応答におけるビタミンCの生理学的役割」、J-stage
https://www.jstage.jst.go.jp/
【4】オーソモレキュラー栄養医学研究所 
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/fe/

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。