夏バテの原因と消化促進に効く食事のポイント

 

暑い季節、「夏バテ」により疲れやすさやだるさを感じていませんか?夏バテが原因で、食欲不振に陥る方も多いのではないでしょうか?
この記事では、栄養の面から夏バテに対処すべく、消化を助ける栄養素や食事の秘訣について解説します。さらに水分補給のコツも紹介します。

夏バテが起こる根本的な原因

暑い環境において、人間の体は体温の上昇を抑えるために汗をかき、その結果水分や塩分を消耗します。この消耗が激しいと、脱水症状や塩分不足に陥ります。これに加えて、タンパク質やビタミンB群、ミネラルなどの栄養素も失われやすくなります。

また、高温多湿な気候は自律神経にも影響を与え、交感神経が優位になりがちです。それに伴い、疲労を感じやすい状態を招きます。

これらの要因が複合的に絡み合い、夏バテを引き起こすのです。

暑さが体に与える影響

体が暑さを感じると、汗をかいて体温を下げようとしますが、この時に大量の水分とともにミネラルが失われることにより、体内の水分バランスが崩れます。

加えて、胃腸への影響も大きいです。暑さによって胃腸の働きが鈍くなり、食欲不振や消化不良が起こることがあります。

消化を助ける食事の秘訣

消化不良

夏バテに負けず、元気を取り戻すためには、消化を助ける食事を心がけることが重要です。暑い季節には、胃腸の働きが鈍りがちですが、そんな時だからこそ食べ方に工夫を凝らすことで、体への負担を軽減しましょう。

夏バテに役立つ消化酵素を活用

夏場の暑さは私たちの体に多くの負担をかけ、しばしば夏バテという問題を引き起こします。夏バテを効果的に解消する1つの方法は、消化酵素の活用にあります。

消化酵素とは、食べ物を小さな分子に分解し、体が栄養を吸収しやすくするために、口の中、胃、小腸で分泌される酵素です。これらの酵素は、特に夏バテによる食欲不振や消化不良を緩和し、私たちの消化機能を支える重要な役割を担っています。

消化を助ける食品には、大根やキャベツ、パパイヤ、キウイなどがあります。これらは天然の消化酵素を含んでおり、消化過程をスムーズにします。これらの食品を積極的に取り入れることは、夏の厳しい暑さを乗り切る手助けとなるでしょう。
消化酵素は熱に弱いため、上記の食材はできるだけ生のまま食しましょう。特に、食事に大根おろしを加えることは、消化を助けるのに効果的です。

栄養素で夏バテ解消

猛暑によって消耗しやすいビタミンやミネラルを意識して摂取し、体調管理に努めることが大切です。水分補給は基本ですが、それだけでは不十分なこともあります。ここでは、バランスよく組み合わせるべき栄養素について詳しく解説します。

夏バテに効く栄養素その1:タンパク質

タンパク質

ここまでに消化酵素が重要なお話はしましたが、タンパク質は消化酵素の構成成分であり、夏バテ解消に欠かせません。しかし夏場は熱がこもりがちな台所での長時間調理を避けるため、麺類やチャーハンなど手軽に済ませられるメニューに偏り、タンパク質の摂取が減ってしまうことがあります。タンパク質の摂取量減少に伴い、消化酵素不足が起こると消化能力が落ち、消化能力が落ちることによって消化不良、食欲不振を引き起こします。それによって食事量が減ったり、あっさりと食べやすい野菜やフルーツで済ませてしまったりと、消化酵素の材料となるタンパク質の摂取がさらに減り、悪循環を引き起こしてしまいます。

タンパク質は筋肉の修復や代謝活動を支える役割を持つため、タンパク質が不足することで体力の回復が遅れる場合があります。

暑い夏は調理せずにすぐに食べられる食材を活用してみてはいかがでしょうか。例えば、刺身や市販のローストビーフなどは、調理せずにタンパク質を摂取することができます。また、豆腐や納豆もすぐに摂取することができる食材です。
植物性のタンパク質には、温泉卵やかつお節などの動物性のタンパク質をプラスするのがおすすめです。タンパク質の摂取量が増えるのはもちろん、タンパク質の質が上がって体内での利用効率もアップすると言われています。

夏バテに効く栄養素その2:ビタミン

夏バテ対策にはビタミンの摂取が不可欠です。ビタミンは、エネルギーの産生や、疲労回復を助ける役割を持ちます。例えば、ビタミンB群はエネルギー代謝を促進し、ビタミンCは疲労物質である活性酸素を除去する抗酸化作用があります。
ビタミンCは熱に弱く、水に溶けやすいため、茹でたり、長時間水にさらしたりはせず、生で食べることができるサラダやスティック野菜などでの摂取がおすすめです。

ビタミンEは、ビタミンCと一緒に摂取すると高酸化力が強まるので積極的に摂りたい栄養素です。ビタミンEは、夏に旬を迎えるアユやニジマスなどの川魚に多く含まれています。川魚は細かい骨が少し多いものの、白身が淡白で食べやすく、食欲の落ちている夏にぴったり。あっさりと塩焼きでいただくのがおすすめです。また、野菜だと赤ピーマンやモロヘイヤに多く含まれています。サラダや炒め物の彩りに赤ピーマンを加えてみたり、モロヘイヤはサッとゆでてお浸しにして食卓に彩りを添えてみたりするのはいかがでしょうか。

参考文献【1】

夏バテに効く栄養素その3:ミネラル

ミネラルは夏バテ解消のために不可欠な栄養素であり、体の機能を正常に保つために必要です。特に、暑さの中、汗として排出されやすいミネラルは、意識して補給を心がけましょう。鉄や亜鉛は日常の食事から摂取しにくいため、注意して摂る必要があります。
これらは、動物性のタンパク質である肉類や魚類に多く含まれています。暑い夏こそ、ミネラルやタンパク質を適切に摂取することが夏バテ対策として重要です。

水分補給のポイント

水分補給

水分補給を行う際には、何を、どのくらいの量で、どのタイミングで飲むかが極めて重要です。
第一に、水分の摂取は、喉の渇きを感じる前に行うべきです。喉の渇きを感じる時点で、すでに体は脱水症状を起こし始めています。そのため、こまめに水を摂取する習慣をつけることが望ましいでしょう。

水分は汗で失われやすい

夏の暑い時期やスポーツを楽しむ際に、体は大量に汗をかきます。発汗は、体を冷却する働きがあり、体温を適切な範囲に保つために不可欠ですが、同時に大量の水分が体外に排出されてしまいます。

水分摂取時の注意点

食前や食中に、水やお茶などの水分をたくさん飲み過ぎないことも大切です。食前にたくさんの水分を摂ると、せっかく分泌された消化酵素が薄まってしまいます。少しずつ、こまめな水分補給を心がけましょう。

まとめ

暑い夏は食欲が落ちがちですが、消化酵素の材料となるタンパク質は不足しないようにしっかりと食事に組み込みましょう。失われがちなビタミンやミネラルも補給することで、夏バテしにくい体作りをすることができます。

オーソモレキュラー栄養療法の基本

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】農林水産省 消費・安全 夏バテに気をつけましょう
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syoku_anzen/manabu/r0307/natubate.html

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。