オーソモレキュラー栄養療法では、血糖値の安定や、1回の食事で補いきれない栄養素の補給を目的として間食を重要視することがあります。
理由の一つとして、食事と食事の間が長く空いてしまうと、血糖値が大きく低下し、症状の悪化や不定愁訴(原因のはっきりしない体調不良)が強く出ることがあります。
また、消化吸収能力が低い方や、一度の食事で十分な量が食べられない方にとっては、必要な栄養素量を、食事回数を増やして「分食」という形で摂取する工夫の一つとしても、間食が役立ちます。
一方で、「間食が必要なのは分かっていても、外出先や忙しいときに何を食べたらいいのか分からない」というお悩みを抱えている方も少なくありません。
そこで今回は、コンビニで手軽に入手できる間食を、摂取の目的別にご紹介していきます。
オーソモレキュラー栄養療法は、栄養素を補うことで、不調の改善を目指す治療法です。
間食の摂取目的
間食の摂取目的としては、主に下記の3つが挙げられます。
1.タンパク質を補いたい
一度の食事で目標とするタンパク質量を摂りきれない場合、間食(補食)を活用するのがおすすめです。
一度の食事でタンパク質を摂りきれない方は、消化吸収の負担や、満腹感が早く訪れること、または食事にかける時間が十分に取れないなどのトラブルを抱えているケースが多く見られます。
また、何か食べたいけれど血糖値を急激に上げたくないときも、タンパク質中心の間食が役立ちます。
間食でタンパク質を摂ることは血糖値の急上昇を防ぎ、さらに食欲を穏やかに保つサポートも期待できます。
2.血糖値を穏やかに保ちたい
血糖値の安定は、心身のバランスを保つ上でとても重要です。オーソモレキュラー栄養療法では、血糖値を急激に上げてしまうような、糖質中心の間食は控えるようにと指導されることが一般的です。ただし、血糖値が下がりやすく低血糖症状が出やすいなど、血糖値を維持することが難しい方にとっては、血糖値を穏やかに上げる糖質を適切に摂ることも重要です。たとえば、食物繊維や脂質・タンパク質を一緒に含む食品は、血糖値の上昇がゆるやかになりやすい傾向があるためおすすめできます。一方、液体の糖質(ジュースやスムージーなど)は、吸収が早く血糖値を急上昇させやすいため、あまりおすすめできません。そして間食のタイミングも大切で、食後2〜3時間を目安に、血糖値が下がりきる前に摂ることが低血糖予防のポイントです。
3.エネルギー源の補給がしたい
オーソモレキュラー栄養療法では、「食事から必要な栄養素をしっかり摂ること」が基本です。しかし、忙しさや食欲の低下などで十分なエネルギー摂取が難しいと、体づくりに必要なタンパク質が、エネルギーとして消費されてしまうことがあります。これによって、筋肉量や免疫力の低下、疲労感の増大、精神的なトラブルなどが起こるケースも。これを防ぐためにも、食事のほかに間食で上手にエネルギー源を補う工夫が大切です。
エネルギー補給といえば「糖質」を思い浮かべがちですが、糖質ばかりに頼ってしまうと血糖値の乱高下を招き、かえって疲れやすく、エネルギー不足のような症状を感じることも。そこで注目したいのが「脂質」です。脂質は糖質やタンパク質に比べ、より多くのエネルギーを生み出すことができます。血糖値を急上昇させることもありません。
間食が甘いものやパンなど糖質に偏りがちな方は、糖質の代わりに脂質を取り入れてみると、エネルギー補給だけでなく血糖値の安定にもつながり、間食の効果を感じやすくなるかもしれません。
注意:すべての人に間食が必要なわけではありません。医師やカウンセラーにご相談を。
オーソモレキュラー栄養療法では、「一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせて、必要な栄養素を適切に摂取すること」が基本とされています。そのため、間食もすべての方に必要とは限りません。
ご自身に間食が必要かどうか、また必要な場合にはどのような内容が適しているかについては、医師やカウンセラーに相談し、専門的なアドバイスを受けることが大切です。
おすすめ食材
ここからは、間食におすすめの食材を、画像とあわせてご紹介していきます。
参考にしながら、ご自身に合ったものを選んでみてください。
1. タンパク質を補いたいときの間食
乾物
例えば、生のカツオの赤身に含まれるタンパク質量は、同じ重量の鰹節と比較すると、約3倍のタンパク質が摂取できます。また、煮干しも同様に、約3倍のタンパク質を含んでおり、手軽にタンパク質を補うのにおすすめの食材です。
ただし、乾燥しているため、固くて咀嚼しづらい点があります。よく噛んで食べることが大切ですが、噛む回数を増やすことで、満足感が得られやすいというメリットもあります。

煮干し:100gで約65gのタンパク質が摂取できます。
するめ:100gで約70gのタンパク質が摂取できます。
ジャーキー:100gで約55gのタンパク質が摂取できます。味付けに甘味料を使用しているケースが多いので、成分を確認してから購入することをおすすめします。
ドライ納豆:100gで約30gのタンパク質が摂取できます。
ゆで卵
どのコンビニにもほぼ確実に置かれている、間食の定番アイテムが「ゆで卵」です。
最近では、殻がむかれた状態のものや、しょうゆ風味などの味付きタイプも販売されており、手軽さと味のバリエーションが広がっています。
良質なたんぱく質と脂質をバランスよく含み、糖質はほとんど含まれていないため、血糖値を安定させながらエネルギー補給ができ、糖質制限中の方にもおすすめです。

100gで約13gのタンパク質が摂取できます。
サラダチキン
最近では、コンビニのチルドコーナーで定番化している高たんぱく食品が「サラダチキン」です。
1パックで約20gのたんぱく質が摂取でき、糖質はほぼゼロ。ボリューム感もあり、満足感が得られやすいのが特徴です。味のバリエーションも豊富で、プレーン(塩味)をはじめ、ハーブ、スモーク、レモン、カレー風味などがあります。シンプルな味付けを選べば、余分な添加物や糖質を避けやすい点も魅力。気分に合わせて、楽しみながら取り入れてみてください。

味付きうずらの卵
コンビニのおつまみコーナーでよく見かける、手軽な高たんぱく食品です。
小ぶりで一口サイズなので、移動中でもサッと食べやすく、個包装タイプを選べば手や鞄が汚れる心配もなく、手軽に持ち歩けます。

100gで約11gのタンパク質が摂取できます。
無調整豆乳
移動中や外出先で手軽にタンパク質を補給したいとき、飲み物タイプは最も取り入れやすい形です。無調整豆乳1本(200ml)で7g前後のタンパク質が摂れます。
ポイントは「無調整」を選ぶこと。調整豆乳には砂糖などが加えられていることが多く、血糖値を上げやすくなるため、注意が必要です。

豆腐バー
サラダチキンと並ぶ、手軽にたんぱく質を補える人気アイテムが「豆腐バー」です。
コンビニのチルドコーナーで広く取り扱われており、おかず感覚のフレーバーや、チョコレート・イチゴ・サツマイモ風味など、スイーツ感覚で楽しめるものもあります。

バータイプに加工された魚
プレミアム志向のコンビニやスーパーなどを中心に見かけることが増えた、バータイプに加工された魚。カツオやサバなどを使用したもので、味付けにはシンプルな塩や醤油の他、風味を効かせた生姜やバジルなどがあります。

プロテインバー
移動中などにも手軽に食べられるプロテインバー。タンパク質源には乳由来のものと、大豆など植物性食品由来のものがありますが、オーソモレキュラー栄養療法では腸内環境への影響を考慮し、植物性タンパク質を使用した製品をおすすめします。選ぶ際には、糖質量が高すぎないものを選ぶのも重要なポイントです。血糖値への影響を抑えるために、糖質は15g未満のものを目安にするとよいでしょう。

個包装タイプのプロテインパウダー
近年では、摂取しやすく加工されたプロテイン製品が、コンビニで手軽に入手できるようになってきました。中には、プロテインパウダーがあらかじめペットボトルに充填されているタイプや、一食分ずつパウチ包装されているものなど、さまざまな形態があります。選ぶ際は、タンパク質源として乳由来(ホエイ、カゼイン)ではなく、大豆やえんどう豆など植物由来のものを選ぶのがおすすめです。

ゆっくりと食べられる時は…
時間に余裕がある時は、テーブルでゆっくりと間食を楽しむのもおすすめです。

鯖缶
オメガ3系脂肪酸がたっぷり!
焼き魚
電子レンジ加熱でも固くなりにくいのがメリット。
納豆
植物性タンパク質は、動物性タンパク質に比べて必須アミノ酸のバランスに偏りがあり、それにより体内でのタンパク質合成効率が低下することがあります。そこで、鰹節や温泉卵など、動物性タンパク質と組み合わせて摂取することで、アミノ酸のバランスを補正し、より効率的なタンパク質合成が期待できます。
豆腐
納豆と同様、植物性タンパク質なので、鰹節をかけたり、シラスをのせたりといったひと工夫で、アミノ酸のバランスが整い、体内でのタンパク質合成をより効率的に行えるようになります。
2. 血糖値を緩やかに保つための間食
ドライフルーツ
サツマイモやバナナ、プルーン、レーズンなど、ドライフルーツは多くのコンビニで手軽に購入できます。
自然由来の糖質を含み、さらに食物繊維も含まれているため、精製された砂糖に比べて糖の吸収がゆるやかです。また、カリウムやマグネシウム、鉄分、ポリフェノールといった栄養素を含むものも魅力です。
ただし、一度に多く摂ると血糖値を急上昇させてしまうこともあるため、一つまみ程度を目安に、ゆっくり噛んで食べることがポイントです。

砂糖やオイルで漬けてあるものは避けましょう。
冷凍フルーツ
カリウムやポリフェノールなど、体の調子を整える微量栄養素の摂取も期待できるのが、冷凍フルーツの良いところです。栄養素の流出をできるだけ防ぐためには、カットされていない、小さくて丸ごと食べられるタイプのものを選ぶと良いでしょう。また、血糖値の急激な上昇を避けるためには、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。
さらに、50gほどの少量パックになっているものを選ぶと、食べすぎを防ぎやすく、間食としても取り入れやすくなります。

ナッツバー
アーモンドやピーナッツなどのナッツをぎゅっと固めたバータイプの間食。ナッツには良質な脂質が豊富に含まれており、エネルギー補給に優れているのが特長です。商品によっては、1本あたり10g前後のたんぱく質を含むものもあり、血糖値の安定と満足感の両方をサポートしてくれます。

3. エネルギーを補給したいときの間食
ローストナッツ
ナッツには脂質が多く含まれています。脂質は三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)の中で、最も多くのエネルギーを生み出す栄養素です。低血糖時のようにすぐに血糖を上げたい場面には不向きですが、食事と食事の間隔が長く空いてしまう方には、少量でもエネルギー補給ができる間食として適しています。特に、酸化しにくいオメガ9系脂肪酸(オレイン酸)を多く含むマカダミアナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツなどがおすすめです。

ハイカカオチョコレート
ハイカカオチョコレートとは、カカオ含有量が高く、砂糖の含有量が少ないチョコレートのことです。一般的には、カカオ70%以上のものが「ハイカカオ」と呼ばれています。ため、血糖値の急激な上昇を抑える効果が期待できます。

MCTオイル
MCTオイル(中鎖脂肪酸)は、消化・吸収が速く、摂取後すぐにエネルギーとして使われる特性があるため、なかなか食事を摂取できないときなどにもおすすめです。
あまり見かけることはないかもしれませんが、「バターコーヒー」という商品名で、バターやMCTオイルがブレンドされたコーヒーが販売されており、手軽にエネルギー補給が可能です。
カフェインを控えている方や、午後に摂取する場合は、個包装タイプのMCTオイルや、同じく中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルを持ち歩き、豆乳やアーモンドミルクなどに加えて活用するのもおすすめです。

まとめ
これまでの栄養指導では、「間食は控えた方がよい」という考えが主流でした。そのため、「間食=悪いもの」というイメージを持っている方も少なくないかもしれません。
しかし、オーソモレキュラー栄養療法では、血糖値の安定や必要な栄養素の補給のために、間食を前向きに活用する考えを大切にしています。糖質に偏ったお菓子やジュースを無意識につまむのではなく、目的に合った良質な間食を選ぶことがポイントです。
間食を上手に取り入れることで、体調の改善や不調の予防につながる可能性もあります。まずはよく利用するコンビニで、生活に取り入れやすい商品を探してみてはいかがでしょうか?
オーソモレキュラー栄養療法の基本
オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。
参考文献
Kohanmoo, A., Faghih, S., Akhlaghi, M., & et al. (2020). Effect of short‑ and long‑term protein consumption on appetite and appetite‑regulating gastrointestinal hormones: A systematic review and meta‑analysis of randomized controlled trials. Physiology & Behavior, 226, 113123.
Sasaki, T. (2011). Amino acid score and protein score. Eiyogaku Zasshi (Japanese Journal of Nutrition and Dietetics), 69(6), 285–287.
https://doi.org/10.5264/eiyogakuzashi.69.285
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

中原 菜緒美
私たちの体は、一つの個体ではなく、無数の細胞が集まってできた集合体であり、健康が保たれるのは、その一つ一つの細胞が正常に働いているからこそです。
また、目には見えなくても、私たちの周りの空間にはさまざまな生命が存在し、見える物体とも共存しています。そう考えたとき、「ヒトは本当に地球上の生命の一部として、命の循環に関わっているのだろうか?」「すべての生命と調和しながら、持続可能に生きていける世界へとつながっているのだろうか?」という問いが生まれました。
この気づきを深めていくうちに、地球環境に存在するあらゆる生命と私たちの食の関係には、改めて向き合うべき大きな課題があると強く感じるようになりました。
今後は、現代人が抱える健康の悩みを解決するサポートをしながら、人も地球も健やかに共存できる、持続可能な未来へとつながる活動に取り組んでいきたいと考えています。
【所持資格】
管理栄養士、栄養教諭、ONP認定カウンセラー、フードコーディネーター
【活動・経歴】
自身の摂食障害の経験をきっかけに、同じ悩みを持つ人の力になりたいと考え、大学卒業後に管理栄養士の道へ。病院や食品メーカーなどで栄養指導や情報発信に携わり、健康支援の現場を経験。現在はフリーランスとしてクリニック、発達支援現場での栄養カウンセリングや、個人開業医向けの栄養療法実装コンサルティングを行う。
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