栄養指導は、健康的な食生活を目指す方や特定の疾患により食事制限が必要な方に対して行う食事のサポートです。オーソモレキュラー栄養療法では、医師の治療方針に基づき、管理栄養士が個々の状況に応じて、日常の食事の中に落とし込めるよう具体的な食事内容や摂取量、調理方法などをアドバイスしています。
本コラムでは、栄養指導中に多く寄せられる質問に、オーソモレキュラー栄養療法の視点からお答えします。前編に引き続き、今回はさらに具体的な質問とその回答をお届けします。
オーソモレキュラー栄養療法は、栄養素を補うことで、不調の改善を目指す治療法です。
- サプリメントはどのタイミングで飲むのが良いですか?
- プロテインを飲むとお腹が張るのですが、どうしたら良いですか?
- ヘム鉄はお茶やコーヒーと一緒に摂取すると吸収が悪くなりますか?
- ビタミンB群のサプリメントを飲むと尿が黄色くなります。過剰ですか?
- 医療用サプリメントと市販のサプリメントは一緒に摂取しても大丈夫ですか?
- まとめ
サプリメントはどのタイミングで飲むのが良いですか?
サプリメントは食品なので基本的にはいつでも摂取可能ですが、消化吸収が効率よく行われるタイミングを選ぶとより効果的です。
一般的には食後に摂取することが推奨されます。食後は消化酵素の分泌が活発になり、胃腸の働きが活発になるため、サプリメントの成分が効率的に吸収されやすくなります。特に脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は、食事中の脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。空腹時に摂取すると胃に負担をかける場合もあるため、食事の後に摂るのが最も安心です。
プロテインを飲むとお腹が張るのですが、どうしたら良いですか?
プロテインを摂取するとお腹が張る原因はいくつか考えられますが、その1つに胃酸の分泌が少ないことが挙げられます。プロテインは消化に時間がかかるため、胃酸が十分に分泌されないと消化不良を起こしやすくなります。
このような場合は、一度に大量のプロテインを摂るのではなく、1回の摂取量を少なくして摂取する回数を増やす方法を試してみてください。これにより、胃腸の負担が軽減され、消化がスムーズに行われるようになります。
また、プロテインの種類を変えてみることも1つの方法です。乳糖不耐症の場合は、ホエイプロテインではなく、植物性プロテインや乳糖フリーのプロテインを選ぶと良いでしょう。
ヘム鉄はお茶やコーヒーと一緒に摂取すると吸収が悪くなりますか?
鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。お茶やコーヒーに含まれるタンニンやカフェインは、非ヘム鉄の吸収を阻害することが知られていますが、ヘム鉄の吸収には影響を与えません。ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に含まれており、その吸収経路は非ヘム鉄とは異なります。したがって、ヘム鉄はお茶やコーヒーと一緒に摂取しても問題ありません。
しかし、非ヘム鉄のサプリメントを摂取する場合は、これらの飲み物を同時に摂取することを避け、ビタミンCと一緒に摂取することで吸収率を高めると良いでしょう。非ヘム鉄を摂取する場合は、お茶やコーヒーを飲んでから1-2時間程度空けて摂取することをおすすめします。
ビタミンB群のサプリメントを飲むと尿が黄色くなります。過剰ですか?
ビタミンB群の中でも特にビタミンB²(リボフラビン)は、黄色を帯びています。ビタミンB群は水溶性ビタミンであり、必要量が体内に吸収された後、余分な量は尿として排泄されます。したがって、ビタミンB群のサプリメントを摂取すると尿が黄色くなるのは自然な現象であり、過剰摂取を示しているわけではありません。
むしろ、体が必要とする量を十分に摂取できている証拠と言えます。安心して継続して摂取していただいて構いませんが、サプリメントの量は適切な範囲内で摂るよう心がけてください。
医療用サプリメントと市販のサプリメントは一緒に摂取しても大丈夫ですか?
医療用サプリメントと市販のサプリメントを一緒に摂取することは一般的に問題ありませんが、いくつかの注意点があります。
まず、医療用サプリメントは特定の治療目的に合わせて処方されているため、治療期間中は医師が推奨するサプリメントを優先することが重要です。市販のサプリメントを併用する場合は、成分の重複や相互作用に注意が必要です。特に、高用量のビタミンやミネラルを摂取する際は、過剰摂取を避けるために医師や管理栄養士に相談することをおすすめしています。
安全、そして効果的にサプリメントを利用するためには、専門家のアドバイスを受けることが最も確実です。
まとめ
オーソモレキュラー栄養療法の観点からは、個々の栄養状態に応じた適切な栄養補給が重要です。医療的なケアを受けている場合は、医師の指示に従い、その上で必要に応じて追加の栄養サポートを検討するというアプローチが望ましいです。
また、オーソモレキュラー栄養療法は、適切な栄養素の摂取により健康を維持・改善することを目指していますが、それは必ずしもサプリメントのみに頼ることを意味しません。バランスの取れた食事を基本とし、必要に応じてサプリメントを利用するという考え方が大切です。また、特に健康上の問題がある場合は、必ず医療専門家に相談した上で、実践することをおすすめします。
オーソモレキュラー栄養療法の基本
オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

水流 琴音(つる ことね)
「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む
【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)
【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。
【SNS】
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