タンパク質が筋肉を作るのに欠かせない栄養素であることは、もはや常識かもしれませんが、タンパク質を効率よく体内で利用するためには、ビタミンB6が重要な役割を果たしていることをご存知ですか?
本記事ではタンパク質との関係性にフォーカスしつつ、ビタミンB6の重要性を解明していきます。
タンパク質とビタミンB₆の関係性
体に摂り込んだタンパク質の代謝に欠かせないのがビタミンB6です。タンパク質はアミノ酸から構成されています。このアミノ酸を体内で適切に利用するためには、ビタミンB6が必要不可欠です。
ビタミンB₆が支えるタンパク質の代謝プロセス
ビタミンB6は、体内でタンパク質がエネルギーとして利用される際や、筋肉や髪の毛などを作るために必要なタンパク質の代謝に深く関与しています。
さらに、ビタミンB6は、タンパク質の利用に直接関与するだけでなく、タンパク質を分解・合成する際の補酵素としてもその力を発揮します。
補酵素とは、体の生命活動を維持するための様々な酵素反応を促進するために必要となる物質です。食べた物をエネルギーに変えたり、取り込まれた栄養素から体に必要な物質を作ったりするような酵素反応をスムーズに進めるのもビタミンB群の働きです。
例えば、筋トレによって傷ついた筋繊維の修復や、筋肉の合成を促進し、筋トレの効果を得るために、適切な量のタンパク質とビタミンB6を摂取することがとても重要なのです。
参考文献:【1】
ダイエットサポートにおけるビタミンB₆
ダイエット効果を向上させるためには、栄養素の理解が欠かせません。実はビタミンB6は、筋トレを行いながらダイエットをする際には、特に注目されるべき栄養素なのです。
体脂肪を減らすための代謝促進
ビタミンB6は、タンパク質から得られるアミノ酸の代謝に必要不可欠です。なぜなら体が必要とするエネルギーを生み出すための重要なプロセスの中に、その他の7種のビタミンBとともに、ビタミンB6も関与しているためです。エネルギーがしっかり供給されることで、体はより活発に活動し、総エネルギー消費量が増加します。その結果、体脂肪の減少を促すことに繋がります。
さらに、ビタミンB6は神経伝達物質の合成を促進する作用があり、心の健康もサポートします。神経伝達物質には、GABA (γ-アミノ酪酸)、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなどがあり、これらの神経伝達物質はアミノ酸から段階を経て合成されますが、そのいくつかの過程においてビタミンB6が重要となります。不足すると、神経伝達物質がうまく作られなくなり、心のバランスが乱れる原因となります。
参考文献:【2】
筋トレ効率を高めるビタミンB₆の活用法
タンパク質とビタミンB6の関係性を理解した上で、筋トレ効率を高めるためには、ビタミンB6を含む食品を積極的に摂ることがおすすめです。ビタミンB6はタンパク質が豊富な肉類、魚類に多く含まれており、また穀物や豆類、種実類にもビタミンB6は含まれているので食事を通じて摂取することが可能です。
ビタミンB6は水溶性のビタミンであるため、大量に摂取しても体に必要とされる量以外は尿で排出されてしまい、体内に蓄積することができません。そのため、日々の食事の中でこまめに摂取する必要があります。筋トレ前後の食事に気を配ることで、筋肉の回復と成長に必要なタンパク質の供給を効率よくサポートしましょう。
参考文献:【2】
ビタミンB₆の最適な摂取法
食生活における栄養バランスに気を配り、ビタミンB6を豊富に含む食品を適切に取り入れることが大切です。また、食品からの摂取を基本とし、サプリメントはバランスを考えながら、日々の摂取法を見直してみましょう。
ビタミンB₆を多く含む食品
ビタミンB6は様々な食品に含まれていますが、その中でもタンパク質を豊富に含む食品に多く含まれているという特徴があります。特に肉や魚に多く含まれているので積極的に摂取することがおすすめです。
ビタミンB群として摂ることの必要性
ここまでビタミンB6の摂取について述べてきましたが、ビタミンB6の体内効率を最大限に高めるためには、8種類あるビタミンBを、「群」として、複合的に摂ることが大切です。
なぜなら、タンパク質の代謝には特にビタミンB6が重要ですが、その代謝と連動している様々な代謝には、他のビタミンBすべてが必要となるためです。体内では様々な代謝活動が起こっていますが、各々が単独で作動しているわけではなく、歯車がいくつもかみ合っているように連動して作動しているのです。
まとめ
ビタミンB6は筋トレやダイエットをはじめ、日常生活を豊かにするために欠かせない栄養素です。筋肉の合成やエネルギー代謝に大きな役割を果たし、健康維持にも寄与します。
ビタミンB6を単独で摂るのではなく、他の栄養素とのバランスを考えた複合的な摂取が非常に重要です。タンパク質や他のビタミンB群と同時に摂取することにより、ビタミンB6は相乗効果を発揮し、体の機能を向上させることが可能になります。
オーソモレキュラー栄養療法の基本
オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。
参考文献
【1】厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 ビタミンB6
【2】中村丁次監修 「からだに効く栄養成分バイブル」 主婦の友社 ビタミンB6
水流 琴音(つる ことね)
「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む
【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)
【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。
【SNS】
Instagram
【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。