オーソモレキュラー栄養療法では、適切な栄養摂取が健康維持の鍵とされています。その中で、「補食」が重要な役割を果たしています。
本記事では、オーソモレキュラー的アプローチに基づいた補食の意義と実践方法について解説します。
オーソモレキュラー栄養療法は、栄養素を補うことで、不調の改善を目指す治療法です。
補食とは
一般的に「間食」と呼ばれるものを、オーソモレキュラー栄養療法では「補食」と表現することが多いです。
補食は、主な食事で摂りきれない栄養素を補う機会として捉えられています。つまり、単に空腹を満たすだけでなく、体に必要な栄養を効果的に摂取するための重要な機会と考えているのです。これは、子どもだけではなく、大人にも当てはまります。
タンパク質を補食で摂取する時のポイント
オーソモレキュラー栄養療法では、タンパク質の十分な摂取をおすすめされることが多いです。なぜタンパク質の摂取が重要なのかというと、タンパク質は体の構築材料として不可欠であるからです。
タンパク質は筋肉、皮膚、髪の毛、爪などの組織を作り、また酵素やホルモンの原料にもなります。タンパク質を摂取する際は、以下の2点を意識して摂るようにしてみてください。
良質なタンパク質源を選ぶ
ゆで卵、鶏ムネ肉、魚、豆腐、豆乳ヨーグルトなどが補食に向いています。
外出先では、より手軽に摂取できるプロテインバーや豆乳などもおすすめです。カバンに1本プロテインバーを入れておくとよいでしょう。
摂取量の目安を意識する
体組成によっても異なりますが、1回の補食で約10~15gのタンパク質を摂れるように意識しましょう。成分表示などを確認してみるとよいですよ。ゆで卵だと1つ当たり約6g、鶏ムネ肉は100g当たり約20gのタンパク質を含んでいます。
参考文献【1】
血糖値のコントロールを意識しましょう
血糖値のコントロールは、オーソモレキュラー栄養療法において重要な要素の1つです。血糖値の急激な上昇と下降は、心身の不調や炎症の促進など様々な健康問題に繋がる可能性があります。血糖値をコントロールするための補食のポイントは以下の4つです。
食間をあけすぎない
空腹時間が長くなると、次の食事での血糖値が上がりやすくなると言われているため、長時間の空腹は避け、3~4時間おきに適度な補食を取りましょう。
低GI(グリセミック・インデックス)の食品を選ぶ
GIとは、Glycemic Index(グリセミック・インデックス)の略で、食後に血糖値がどれくらい上昇するかを示す指標のことです。0から100の範囲で表され、ブドウ糖を100とした時の相対的な数値で、数値が低いほど、血糖値の上昇が緩やかであることを意味しています。
ナッツ類など血糖値の上がりにくい低GI食品を選択することがおすすめです。また肉、魚などのタンパク質はGI値が低いため、補食として安心して召し上がっていただけます。
高糖質食品を避ける
パンや麺など精製された炭水化物や糖分の多い菓子類は血糖値を急上昇させるため、控えめにしましょう。
代替甘味料を活用
ラカントS(エリスリトール)や羅漢果(ラカンカ)エキスなど、血糖値に影響の少ない甘味料を使用すると、砂糖と同じように甘味を味わうことができます。甘いものを食べたくなった時には、こういった甘味料を使用したおから蒸しパンや、ソイラテを試してみてください。
グルテンにもご注意を!
オーソモレキュラー栄養療法では多くの場合、グルテンフリーの食事が推奨されます。グルテンは小麦、大麦、ライ麦などに含まれるタンパク質で、一部の人々に消化器系の問題や炎症反応を引き起こす可能性があります。
グルテンフリーの補食を実践するために押さえておきたいポイントは2つあります。
グルテンを含む食品を避ける
グルテンは、パン、パスタ、クッキーなどの小麦製品に含まれています。おやつにクッキーやケーキをよく食べている方はこれらを控えることから始めてみましょう。
成分表示を見て「グルテンフリー」の表示があるものを選ぶようにしましょう。加工品や調味料は表示を見て気付くことも多いので、普段から成分表示を確認する癖をつけておくとよいです。
野菜、ナッツ類、豆類などは自然のグルテンフリー食品です。
トマトやキュウリ、パプリカなども立派な補食になります。暑い季節、冷やして食べるとおいしいですよ。
煎り大豆もサクサクした食感があり、食べ応えがあるのでおすすめです。
代替食材を活用する
小麦粉の代わりに使用できる代替食品が多く流通しています。
米粉はパンやお菓子作りの際、代替品として便利です。大豆粉やおから粉は、タンパク質や食物繊維が豊富で、唐揚げの衣代わりにまぶすなど、様々な料理に使えます。アーモンドプードルは低糖質で、お菓子を作るときに入れるとサクサク感が増すのでおすすめです。
まとめ
オーソモレキュラー的補食は、単なる間食ではなく、健康的な食生活を支える重要な要素です。タンパク質の十分な摂取、血糖値のコントロール、そしてグルテンフリーの実践を意識することで、より効果的な栄養補給が可能になります。
しかし、人によって必要な栄養素や量は異なります。どのような補食が最適かは、個人の健康状態、生活習慣、遺伝的要因などによって変わってきます。そのため、より詳細な個別化されたアドバイスを得るには、オーソモレキュラー実践クリニックでの相談がおすすめです。専門家のアドバイスを受けることで、あなたに最適な補食プランを立てることができるでしょう。
オーソモレキュラー栄養療法の基本
オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。
参考文献
【1】文部科学省 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html
水流 琴音(つる ことね)
「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む
【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)
【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。
【SNS】
Instagram
【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。