意外と知らない?! ビタミンB1がエネルギーチャージに重要な理由

 

ビタミンBは全8種類あり、「現代人に不足しがちな栄養素の1つ」とも言われています。オーソモレキュラー栄養療法において、ビタミンBはどれか1種類ではなく、複合的に摂取することが重要と考えられていますが、中でもビタミンB1は、特に、糖質のエネルギー代謝において重要な役割を果たしています。すなわち、糖質が体の中でエネルギーに変換されるために、重要なポジションを担っているのがビタミンB1です。本記事では、ビタミンB1とエネルギー代謝の密接な関係について詳しく探っていきます。

ビタミンB1とは

ビタミンB1水溶性ビタミンの1つで、化学的にはチアミンとして知られています。日常生活での適切な摂取が重要であり、主な食品源としては、豚肉、穀類、ナッツ類などが挙げられます。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、成人の場合、1日のビタミンB1の摂取目標は約1.1〜1.5mgとされています。目安として、豚ヒレ肉100gあたり1.22mg、ウナギ100gあたり0.55mgのビタミンB1が含まれています。

参考文献:【1】

エネルギー代謝における役割

エネルギー

ビタミンB1の役割は多岐に渡りますが、特に糖質のエネルギー代謝において重要な役割を果たしています。
エネルギー代謝とは、体が摂取した栄養素からエネルギーを生成する過程のことを言います。具体的には、糖質や脂質などの栄養素が体内で分解され、そのエネルギーが細胞内で利用可能な形に変換されます。

ビタミンB1はこの過程において特に重要な役割を果たしており、中でも糖質からエネルギーを生成する際に必要な酵素の一部として機能します。
ビタミンB1がエネルギー代謝に関与する主なプロセスを深堀りしてみましょう。

▶炭水化物の分解

ご飯、パン、麺などの炭水化物から成る主食は、糖質を多く含みます。消化の過程で炭水化物は糖質と食物繊維へ分かれ、糖質だけが体内へと吸収されます。その後、糖は代謝され、ピルビン酸という物質に変換されます。

▶エネルギーの工場へ

ピルビン酸は、私たちの細胞の中で「エネルギーの工場」とも言えるミトコンドリア内に運ばれます。ここでピルビン酸はアセチルCoAという物質に変わります。この変換の過程で、ビタミンB1が大切な役割を果たします。

▶エネルギーの産生

アセチルCoAは、細胞内で起こる様々な反応に使われ、最終的に、エネルギーが作られます。これにより、私たちの体は、動いたり考えたりするために必要なエネルギーを得ることができます。
つまり、ビタミンB1は体が食物からエネルギーを作ることを助ける大事な栄養素の1つなのです。

参考文献:【2】

食べ物からエネルギーができるまで

ビタミンB1が不足するとどうなる?

ビタミンB1不足

ビタミンB1の欠乏症には脚気(かっけ)、ウェルニッケ脳症、乳酸アシドーシスなどがあります。最近では「バランスの摂れた食事をしていれば、ビタミンB1欠乏症は極めて発症しにくい」と言われていますが、医療機関で静脈栄養管理などの措置を行う際には、これらの欠乏症が見られることがあります。

それでは、普段の生活の中で、ビタミンB1不足は、私たちの体にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
ご飯、パン、麺が大好物というそこのあなた、あるいは、つい手軽なこれらの食材に手が伸びてしまいがちなあなた、要注意です。
ご飯、パン、麺などは、糖質を多く含みます。糖質の多い食材を摂取する機会が多いと、特にビタミンB1の需要が高まります。ビタミンB1が多く利用されてしまった結果、欠乏に陥ることがあるのです。
ビタミンB1が欠乏してしまった体は、十分なエネルギーを作れなくなり、疲れやすくなったり、元気がなくなったりしてしまいます。なかなか疲れが取れないと感じる方は、ぜひビタミンB1を意識して摂るようにしてみてください。

また、「ダイエットをしているのに痩せにくい」と感じたことはありませんか?もしも食事を制限していて、野菜に偏った食生活になっていたら要注意です。
実は、ビタミンB1は肉や魚などのタンパク質に多く含まれています。ビタミンB1の不足によりエネルギー代謝が低下している可能性もあるため、食習慣を見直してみましょう。

参考文献:【3】

ビタミンB1を無駄にしない食べ方

ビタミンB1を効果的に補給するためには、バランスの取れた食事が重要です。特におにぎりだけ、パンだけ、ラーメンだけ、バナナだけ、などの炭水化物に偏った食事にならないように気をつけましょう

その理由として、ビタミンB1が「炭水化物の代謝」に関与していることが関係しています。積極的なビタミンB1の摂取も大切ですが、「せっかく摂取したビタミンB1を無駄遣いしない食べ方」をすることも重要です。

豚肉、大豆、穀類、ナッツ類、レンズ豆などの食品は、ビタミンB1を豊富に含んでいます。おかずをしっかり意識して食べるようにしたいですね。
また、サプリメントの活用により、不足するビタミンB1を補うこともできます。サプリメントは、医師の指導のもとでの摂取をおすすめしています。栄養療法を行う最寄りの病院やクリニックを、こちらから検索することもできます。

まとめ

ビタミンB(全8種類)はどれか1種類ではなく、複合的に摂取することが重要ですが、中でもビタミンB1は、私たちの体にとって不可欠な栄養素であり、特にエネルギー代謝において大切な役割を果たしています。エネルギー代謝に関わるので、ダイエットの成功の鍵となる栄養素でもあります。適切な摂取量を確保することで、健康な体を維持することに役立ちます。
イキイキとした活力ある毎日を過ごすために、バランスの取れた食事や適切な栄養補給を心がけ、ビタミンB1を積極的に活用していきましょう。

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】日本人の食事摂取基準 ビタミンB群
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4z.pdf

【2】ガイアブックス ハンス・コンラート・ビーザルスキ, ペーター・グリム(2022年)「基礎・栄養素・栄養医療の実践からなるカラーアトラス栄養学」、炭水化物、代謝1

【3】「ビタミンB1」水谷雅臣、鍋谷圭宏、石井良昌、朝川貴博、大石英人、大原寛之、川村順子、児玉佳之、篠 聡子、白木 亮、鈴木大亮、津田豪太、土師誠二、矢賀進二、八木 実、杉浦伸一、丸山道生(2019年)/J-stage
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ejspen/1/2/1_104/_article/-char/en

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。