オーソモレキュラー栄養療法におけるビタミンCの考え方

 

オーソモレキュラー栄養療法は栄養素を適切に摂取することで、健康を維持することを目的とした食生活の考え方です。個々の生体分子の濃度を調整することで、健康を最適化しようとするアプローチのことを言います。本記事ではビタミンCの歴史を探りながら、オーソモレキュラー栄養療法における基本概念と、ビタミンCの考え方について深堀りしていきます。

ビタミンCの基本知識

ビタミンCは、水溶性ビタミンの一種であり、アスコルビン酸としても知られています。ビタミンCは、人間の体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があります。ビタミンCは多くの生理学的機能を担っており、抗酸化作用、コラーゲン合成の促進、免疫機能の強化など多くの機能があります。欠乏症のリスクを避けるためには、適切な摂取が重要です。

ビタミンCの働き

ビタミンCは、抗酸化作用を持ち、体内の活性酸素を除去する働きがあります。
またビタミンCは、コラーゲンの生成に必要なタンパク質の一種であるプロリンの合成を促進させたり、免疫力を向上させたりなど、様々な働きがあります。

ビタミンCの歴史

ビタミンCの歴史をさかのぼってみましょう。1747年、スコットランドの船医ジェームズ・リンドによって、壊血病(くる病)の治療にビタミンCの摂取が効果的であることが発見されました。その後、ビタミンCの不足が壊血病の原因に繋がることを、1930年代にアメリカの化学者アルバート・セント・ジョージらが発見。ビタミンCの不足が壊血病を引き起こし、ビタミンCの摂取によって治療および予防が可能であることが分かりました。
またビタミンCは、壊血病以外にも、風邪やインフルエンザなどの感染症の予防や治療にも効果的であることが分かり、世間に広く知られるようになりました。

オーソモレキュラー栄養療法の先駆者として知られるのは、ライナス・ポーリングです。彼は1960年代から70年代にかけて、ビタミンCの高用量療法が健康に対して有益であると主張しました。ライナス・ポーリングは、風邪やがんなど様々な疾患に対するビタミンCの効果について研究を行い、これがオーソモレキュラー栄養療法の基盤となりました。

一般的な推奨量

ビタミンCの1日あたりの推奨量

厚生労働省が提示する日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、ビタミンCの1日あたりの推奨量は、成人男性、女性ともに100mgです。この根拠は、体内ビタミン C プールを反映する 白血球ビタミン C 濃度が 100 mg/日で飽和することから、この推奨量値が妥当であると考えられています。

参考文献:【1】

オーソモレキュラー栄養療法におけるビタミンCの考え方

オーソモレキュラー栄養療法は、一人ひとりの栄養状態を把握し、個々の症状に応じた最適な栄養素摂取の提案を行うことが重要と考えています。そのため、ビタミンCの効果を最大限に引き出すために一般的な推奨量よりも多くのビタミンCを摂取することがあります。

ビタミンCの摂取方法

ビタミンC

ビタミンCは、野菜や果物に多く含まれています。ビタミンCの含有量が高い代表的な食品としては、以下のものがあります。

・パセリ:170mg
・ピーマン:140mg
・キウイフルーツ:92mg
・ブロッコリー:89mg
・オレンジ:53mg
・レモン:40mg
・グレープフルーツ:31mg

※すべて100gあたりに含まれるビタミンC量で表記

参考文献:【2】

ビタミンCは熱に弱いため、加熱調理をすることで失われることがあります。そのため、できるだけ生の状態で摂取することが望ましいとされています。またビタミンCは、喫煙、ストレスなどによっても消費されるため、積極的に摂取することが大切です。
さらに、水溶性ビタミンであるビタミンCは、水に溶け出しやすい性質があります。体内で余分となった量は、汗や尿として比較的容易に流れ出てしまうので、日常の食事・サプリメントから、こまめに摂取することがとても大切です。
ビタミンCの調理法や、摂取のポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。

まとめ

オーソモレキュラー栄養療法は、栄養素を用いた根本治療を目的とした治療法です。 そのためビタミンCを高容量で使用することがありますが、高容量のビタミンCの使用は、医師の指導のもとで行うことが望ましいでしょう。

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版 ビタミンC
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
【2】国立研究開発法人 医薬基盤・健康栄養研究所 ビタミンC

https://hfnet.nibiohn.go.jp/vitamin/detail179/#001

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。