冬になると寒さとともに、心の健康にも注意が必要です。特に、「冬季うつ」と呼ばれる季節性のうつ病が増えることが指摘されています。この背景には、私たちの体が必要とするビタミンDの不足が関係しているとも言われています。
そのため、冬こそしっかりと意識してビタミンDを摂取することが重要です。この記事では、ビタミンDがどのように私たちの体と心に影響を与えるのか、詳しく見ていきましょう。
日本人はビタミンDの血中濃度が低い!?
ビタミンDは主に食物から摂取するだけでなく、日光を浴びることで体内にて生合成されます。ただ、日本では特に冬になると日照時間が短く、屋内で過ごす時間が増えるため、ビタミンD不足に陥りがちです。
東京慈恵会医科大学の調査によると、2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた5,518 人を対象に調査を実施し、そのうち98%がビタミンD不足に該当していたことを明らかにしました。算出した結果を見ると、男性が平均7–30ng/mL、女性が平均5–27ng/mL(全体6–29ng/mL)であり、健常人の 98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンD基準濃度である30ng/mLに達していないことが判明し、日本人はビタミンDが不足しているということがわかりました。
このことは、日本人の骨の健康や免疫機能、そして精神的な健康にも悪影響を与えている可能性があります。
参考文献【1】
ビタミンDの働き
ビタミンDはカルシウムの代謝を助け、骨の健康を保つ役割があることはよく知られています。特に、高齢者の骨粗しょう症予防において、ビタミンDが重要な役割を果たすことは広く認識されています。
しかし、ビタミンDにはそれ以外にも重要な働きがあり、特に免疫機能のサポートや、精神面での健康維持にも関与していることがわかってきています。
ビタミンDは免疫細胞の活性化を促し、風邪やインフルエンザの予防にもつながると考えられています。
うつ病とビタミンDの関係
以前よりビタミンD不足はうつ病の発症と関連があるという研究結果が報告されていることに加え、近年では、ビタミンDの脳内神経伝達物質のバランスを保つ役割を果たす可能性も示唆されています。
参考文献【2,3,4】
なぜ冬にうつ病が増えるのか?
冬になるとうつ病が増える理由の1つは、日照時間が短くなることです。ビタミンDの産生量が減少し、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れやすくなり、気分が落ち込むことが多くなるとされています。
特に冬季うつ病は、日照不足が大きな要因であると考えられており、ビタミンDの不足が心の健康に影響を与えている可能性も考えられています。
ビタミンDが摂れる食べ物
ビタミンDは日光による生合成だけでなく、食事からも摂取できます。特に豊富に含まれているのは、以下のような食品です。
- 鮭、マグロ、サバなどの脂の乗った魚
- 鶏卵の黄身
- きのこ類(特に干しシイタケ)
これらの食品を意識的に取り入れることで、冬場のビタミンD不足を補うことができます。
ただ、先述の東京慈恵医科大学の調査で測定されたビタミンDのほとんどが動物あるいは日光由来のビタミンD3であり、シイタケなどの植物由来のビタミンD2はほぼ検出されなかったといった報告もあることから、効率良くビタミンDを体内に取り込むためにも魚や卵など動物由来の食品をより積極的に摂ることをおすすめします。
参考文献【1】
1日に摂りたいビタミンDの量
厚生労働省の推奨によれば、成人の場合、1日に必要なビタミンDの摂取量は5.5μgとされています。しかし、ビタミンD不足のリスクが高い人や、冬の間はこれ以上の摂取が望ましいでしょう。食事からの摂取だけでは不足しがちな場合は、サプリメントの活用も1つの方法です。
冬の間は、風邪など体の健康だけではなく気温だけでなく心の健康にも注意を払い、ビタミンDを積極的に摂取することで、心身のバランスを保ちましょう。
まとめ
冬季におけるビタミンDの不足は、私たちの体だけでなく、心の健康にも関係しています。日照時間が短くなり、屋内で過ごす時間が増える冬だからこそ、食事やサプリメントを通じて、意識的にビタミンDを摂取することが重要です。特に魚や卵など、動物性食品を取り入れることで、効果的にビタミンDを補給することができます。
また、日常生活においては、できるだけ屋外に出て日光を浴びることも心がけましょう。ビタミンDをしっかりと摂取し、寒い冬を心身ともに健康に過ごすための対策を講じることが大切です。
オーソモレキュラー栄養療法の基本
オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。
参考文献
【1】東京慈恵会医科大学 越智小枝・斎藤 充 他 「98%の日本人が「ビタミンD不足」に該当 国内初の基準値を公表、植物由来のビタミンDはほぼ検出されず」
https://www.jikei.ac.jp/press/detail/?id=7154
【2】活性型ビタミンDは、トリプトファン水酸化酵素およびレプチン遺伝子発現を制御する
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vso/91/2/91_132/_article/-char/ja/
【3】Effect of vitamin D supplementation on the incidence and prognosis of depression: An updated meta-analysis based on randomized controlled trials
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35979473/
【4】Effect of vitamin D supplementation on the incidence and prognosis of depression: An updated meta-analysis based on randomized controlled trials
https://doi.org/10.3389/fpubh.2022.903547
水流 琴音(つる ことね)
「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む
【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)
【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。
【SNS】
Instagram
【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。