健康の鍵はタンパク質? サインを見逃さない食事術

 

体内で重要な役割を果たすタンパク質は、私たちの健康に欠かせない栄養素の1つです。タンパク質不足が生じると、様々な体の不調につながる可能性があるため、体からのサインを見逃さないことが大切。今回のコラムでは、タンパク質不足が引き起こす可能性のある症状や予防法についてお伝えします。

はじめに知っておいてほしいこと

タンパク質不足かな? と自身の状態を振り返る前にぜひ知っておいて欲しいこと。それは「タンパク質は常につくり変えられており、食べ溜めができない」という点です。体内では、タンパク質が異化(分解)され、そして同化(合成)されるという代謝プロセスが繰り返されています。

▶異化とは

複雑な物質であるタンパク質を分解し、単純な構成要素やエネルギーを取り出す生理学的なプロセスを、異化といいます。例えば、食物から摂取されたタンパク質がアミノ酸に分解され、エネルギーが生成されることも異化のプロセスです。

▶同化とは

異化とは逆に、単純な構成要素から複雑な物質を合成するプロセスを同化といいます。タンパク質を合成する場合は、アミノ酸が結合します。同化は体の成長、修復、エネルギー貯蔵に関与しています。

▶︎異化と同化のバランスが大切

異化と同化はバランスが重要です。異化と同化が同じレベルで保たれている時、私たちの体は健康でいられると言われています。
タンパク質の異化は、体内でのタンパク質の合成(同化)とバランスを保つために、重要な役割を果たしています。
異化と同化は生命活動を維持するために連携して働き、栄養素の効率的な利用とエネルギー供給を行っています。例えると、異化は家を取り壊す大工、同化は家を建て替える大工としての役割があります。

タンパク質不足が起こりやすい方

タンパク質不足が起こりやすい方

では、どのような方がタンパク質不足になりやすいのでしょうか。以下のような食生活や生活習慣の方はタンパク質不足が起こりやすいため、注意が必要です。

  1. ご飯や麺、パンなどの炭水化物や甘いものが好き
  2. 野菜中心の食事である
  3. ダイエット中である
  4. 成長期である
  5. スポーツをする、肉体労働である
  6. 妊娠中、授乳中である

①~③の方はタンパク質の摂取量の不足、④~⑥はタンパク質需要増が懸念されるケースです。どちらの場合も積極的な摂取が大切です。

タンパク質不足で現れる症状

タンパク質不足が続くと、下記のような症状が現れることがあります。

▶筋力の低下

タンパク質は筋肉の構築と修復に必要な栄養素。不足すると筋力が低下したり、運動をしても脂肪を燃焼しにくくなったり、なかなかパフォーマンスが上がらないケースも。

▶脂肪を燃焼しにくくなる

タンパク質が不足すると筋肉量が減少し、それに伴い基礎代謝が低下します。基礎代謝の低下によって消費するエネルギーが減少、脂肪を燃焼しにくくなります。

▶肌や髪にハリがない、爪がもろくなる

髪や爪もタンパク質からつくられます。タンパク質が不足すると髪や爪の状態が悪くなったり、肌荒れを起こしたりなど、トラブルが生じやすくなります。

▶風邪を引きやすくなる

タンパク質が不足することで免疫系に必要なグロブリンが不足してしまうため、感染症への抵抗力が弱まり、すぐに風邪を引く、風邪が長引く、繰り返すなど体調を崩しやすくなってしまいます。

▶疲れやすくなる

エネルギーの生成にタンパク質が関与しています。そのためタンパク質が不足すると活動するためのエネルギーも足りなくなり、疲れやすくなります。

疲れやすくなる

タンパク質不足を防ぐために

不調の症状が出てしまう前に、必要量のタンパク質を摂取するよう心がけましょう。ここからはタ
ンパク質不足を防ぐためのヒントをお教えします。

▶毎食タンパク質を食べよう

前述したように、タンパク質は食べ溜めができません。毎食タンパク質を食事で摂取するようにしましょう
納豆や豆腐などは手軽に摂取できるタンパク源として、忙しい朝でも取り入れやすい食材です。

▶「タンパク質ファースト」に食べ方を変えてみよう

食が細い方、野菜でお腹いっぱいになってしまう方はタンパク質から食べる「タンパク質ファースト」で食事をすると良いでしょう。
タンパク質でお腹を6割程度満たし、野菜やきのこなどの食物繊維をしっかり摂って、ご飯、パン、麺などの主食は最後に食べるようにすると必要な栄養が摂りやすくなります。

▶副菜にもタンパク質を足してみよう

副菜にもタンパク質を足してみよう

毎食メイン料理だけで必要なタンパク質量を摂ることは大変なこと。そこでおすすめなのが副菜にもタンパク質をプラスすることです。
干しエビや鰹節、シラスなどは和え物に加えたり、乾煎りしてふりかけにしてご飯に混ぜたりする
ことができる便利な食材です。

▶間食を活用しよう

間食は「甘いもの」を食べる時間と思っていませんか? 間食は食事で補いきれず不足しがちな栄養素を摂る「補食」として考えましょう。
特に成長期のお子様は、1食で必要な栄養素を摂取できないこともあるため、小分けにして食べさせてあげることが、タンパク質不足を防ぐことにも繋がります。

まとめ

大切なのは体のサインを見逃さないこと。タンパク質不足のサインは体からの黄色信号です。当てはまるものがあった方は、少しずつタンパク質量を意識してみてくださいね。
タンパク質は食べ溜めができない栄養素。多様なタンパク源をこまめに摂取することが健康を守るために重要です。

オーソモレキュラー栄養療法では、特定の不足栄養素を補う前に、基礎的な栄養素(主に、タンパク質、鉄、ビタミンB群)がヒトの体の土台作りの材料として重要と考えています。これらの栄養素の体内バランスを整えた上で、不足している栄養素を補うことで、健康維持や不調の改善を目指します。

参考文献

【1】オーソモレキュラー栄養医学研究所HP(タンパク質・ビタミンB群)
https://www.orthomolecular.jp/nutrition/protein/

【2】「図解ワンポイント生理学」片野由美

監修
水流琴音

水流 琴音(つる ことね)

「暮らしのなかで自然にふれる」やさしい食を台所から育む

【所持資格】
管理栄養士、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所 認定ONP(7期)

【活動・経歴】
フリーランス管理栄養士として活動中。
オーソモレキュラー栄養療法を取り入れたクリニックで栄養カウンセラーとして勤務。
また、クリニックでの栄養療法の導入支援やスタッフ研修も行っている。
その他、フリーランスとして予防医療に関する発信や執筆、一般向けセミナー講師としても活動中。

【SNS】
Instagram

【認定ONPとは】
オーソモレキュラー・ニュートリション・プロフェッショナル(ONP)は、一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所が認定する栄養カウンセラーの資格です。認定ONPはオーソモレキュラー栄養医学の正しい理論に基づく、栄養素の知識、血液検査データの解釈、病態別栄養アプローチ、食事指導のプロフェッショナルとして、医療機関などで活躍しています。
また、同法人では、一般の方を対象としたオーソモレキュラー栄養療法の概要、食生活の指針、食品・サプリメントについてなど、最先端の栄養健康学のポイントを学べるオーソモレキュラー・ニュートリション・サポーター(ONS)講座を開講しています。